2012年4月21日、札幌市産業振興センターに於いて“PHPカンファレンス北海道2012”が開催された。本稿ではその様子を報告する。
会場ではメイントラックとハンズオントラックに分かれて催しが行われたが、本稿ではとくにメイントラック会場(セミナールームA)で行われた各種講演の内容を報告する。なお、ハンズオン会場では“濃縮版 8時間耐久 CakePHP 2.1”と“初めて作るWordPressオリジナルテーマ”が行われた。
なお、本カンファレンスの詳細については公式Webサイトを参照されたい。
第1セッションでは、開発者のみならず、Webに関する業務を行う人々でも知っていると役に立つ、PHPの「ちょっとしたコード」が紹介された。
導入が楽でコンパイルも不要であるPHPは、共通部分(ヘッダ、グローバルナビゲーション、フッダなど)をパーツ化(モジュール化)することが出来、いわばWebサイト内で“使いまわす”ことが可能になることが紹介された。
このほか、これよりも応用的な話題として、変数(PHPだと $hoge)や条件分岐(if / elseなど)に関する解説もあった。
ふだんPHPには馴染みのないWebデザイナにとっても、PHPが親しみやすく感じられたのではないだろうか。
(http://another.maple4ever.net/wp-content/uploads/etc/zip/PHPConDo2012.pdf)
第2セッションでは“WordPress(WP)”を用いたサイト制作に関する紹介が行われた。なおWPとはPHPとMySQL(データベース管理システム)で動作するオープンソースライセンスのCMSである。
まずはWPの誕生の経緯、およびその仕組みなどについて説明をされた。もともとはブログ制作を起源としたCMSであるが、現在はブログよりもそれ以外のWebサイトで使われており、世界の人気サイトのおよそ13%で使用されていることが紹介された。 その後、動画ファイルを用いて実際にWPのWebサイトを制作する様子を、記事の投稿からテーマ(テンプレート)の作成までひと通り紹介された。
WPのことを知らない人でも、その使いやすさを感じることができたのではないかと思う。
(http://prezi.com/jwwoeyteevys/php/)
午後一番の第3セッションでは“PHP再入門”と題し、その歴史と学び方が紹介された。
1995年4月に“Personal Home Page Tools = PHP Tools”として世に出たPHP。2002年以降にはSymfony、CakePHP、Rhacoなどといったフレームワークが多く登場し、2008年にはマイクロフレームワークが登場したこと。2004年にPHP 5が公開されて以来マイナーバージョンアップが続き、現在はPHP 5.4が最終バージョンとして公開されていること。その他、PHPの歴史をわかりやすく説明された。
PHPの学び方は氏によると、初級者は問い合わせフォームの作成・WPなどのカスタマイズ、中級者は掲示板の作成・WPなどのプラグインの作成、上級者はサービスの一般公開・オープンソースアプリの開発――というようにしてはどうか、とのことであった。 筆者としては、PHPの歴史に触れることでそれが身近に感じられ、また、このような“学び方”でPHPに親しみのようなものを感じることができた。
(http://www.slideshare.net/kanreisa/20120421)
第4セッションはこの「さくらのクラウドのコンパネをつくる話」。“さくら”とはもちろん“さくらインターネット株式会社”のことである。
「さくらのクラウド」に関しては、インフラの構成イメージやネットワークの物理構成イメージなどの説明をされた。また「さくらのクラウド」のAPIの仕様の説明があり、実際のAPIリクエスト例を交えながらの解説もされた。
「コンパネをつくる話」では設計方針から細かくお話された。JavaScript、HTML 5、CSS 3を積極的に導入したというお話しがあり、その後は実際のコントロールパネルのキャプチャ画面を用いて解説された。
なお、「さくらのクラウド」のコンパネのために開発されたJavaScriptクラスライブラリを順次公開されているとのことである。興味のある方はご覧になってはいかがだろうか(*1)。
(*1) kanreisa (yuki KAN) - GitHub(http://github.com/kanreisa/)
(http://speakerdeck.com/u/fivestar/p/symfony21)
先に記したとおりPHPのフレームワークの一つであるSymfony2。小川氏が所属する株式会社クロコスではフレームワークとしてSymfony2を使用しており、第5セッションではそれを使ってみて学んだことについて報告された。その後、氏の著書に関してご自身より紹介があった(*2)。
まずはSymfonyの歴史や特徴についてお話しされた。2007年1月に世に出た比較的新しいフレームワークであり、Symfony2はPHP 5.3以上に対応している。特徴としては、高い柔軟性を持つことや、設計の自由度が高いためにスキルがある程度求められることが挙げられる(それゆえ、開発初心者には不向きといえるとのこと)。
氏が学んだこととしては、オブジェクトに関すること、シンプルに作ること、YAGNI原則(You ain’t gonna need it)、DI(Dependency Injection)などをお話しされた。 筆者は開発の経験があまりないゆえ、氏が話されることのほとんどが“新たな発見”であった。
(*2) “パーフェクトPHP”共著、技術評論社(2010)
“効率的なWebアプリケーションの作り方”技術評論社(2012年5月29日発売予定)
(http://www.slideshare.net/ockeghem/phpcondo)
最後の講演である第6セッションは徳丸浩氏によるもの。“徳丸本(*3)”には載っていないWebアプリケーションセキュリティ、脆弱性について、広く紹介された。
紹介されたセキュリティに関する脆弱性は“キャッシュからの情報漏洩(いわゆる別人問題)”、“クリックジャッキング”、そして“Ajaxセキュリティ入門”と題した三つである。それぞれ、プレゼンテーションと併せて、実際にWebブラウザなどを使用したデモを交えながら紹介された。筆者としては各々の脆弱性が孕んでいる危険性(?)を改めて認識する機会になった。
この他、“ドリランド カード増殖はこうしておこった……かも?”という発表もされた。PHPのほかにデータベース(とくにトランザクション)に関する内容も含まれていたが、身近な出来事でわかりやすく、PHPとデータベースに関することを解説された。
本カンファレンスのセッションは、徳丸氏による充実した内容で幕を下ろした。
(*3) “体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 ―― 脆弱性が生まれる原理と対策の実践”ソフトバンククリエイティブ(2011)
閉会式の前にはライトニングトークも行われ、5人の方から発表を頂いた。以下に発表タイトルを列挙する。
今回の“PHPカンファレンス北海道2012”は北海道では初めての開催。当日は約150名もの方々のご来場を賜り、無事成功のうちに終了することができた。
ここに改めて、ご来場頂いた皆様と、当日各所でご講演頂いた皆様に、厚く御礼を申し上げる。
丸小 拓将(MARUKO Takunobu) 一般社団法人LOCAL 正会員、札幌学院大学社会情報学部 在学中。データベースが結婚相手、Webが愛人。(http://www.w80.jp/、Twitter: @tack261)